大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和45(オ)587 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人寺井俊正の上告理由第一点について。

記録によれば、上告人が原審において所論のような趣旨に解される主張をしたも

のと認められないことはなく、原判決がこれに対する判断を示していないことも所

論のとおりである。しかし、無権代理人が代理行為の目的物を本人から取得した場

合には、相手方が民法一一七条にいう履行を選択したときにかぎり、右行為が相手

方と無権代理人との間に成立したのと同様の効果を生ずるものと解すべきところ(

最高裁昭和三八年(オ)第一〇四一号同四一年四月二六日第三小法廷判決、民集二

〇巻四号八二六頁参照)、本件根抵当権設定契約につき、相手方たる上告人が無権

代理人であるDに対しその履行の選択をしこれを請求した事実は、原審において主

張されていないところであるから、所論のように同人が本件土地建物の共有持分を

譲り受けた事実があつたとしても、それだけでただちに右持分に対する部分につき

右契約を有効ならしめるものではなく、したがつて、原判決が右事実につき判断を

しなかつたことは、その結論に影響するものではないというべきである。そして、

不動産の共有者は、各自その持分に基づき、保存行為として、不動産全部について

の妨害排除を請求しうるものであつて、必ずしも共有者全員が共同してこれをしな

ければならないものではないと解すべきであるから、第一審原告亡Eの共同相続人

中被上告人らのみによる本件訴訟手続の受継を適法とし、その請求を認容した原判

決は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点および第四点について。

EがDに対し本件土地建物の処分等の包括的代理権を与えた事実は認められず、

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本件根抵当権設定契約およびその登記はDがEの実印および権利証を無断で使用し

てなしたものであるとした原判決の認定・判断は挙示の証拠に照らして肯認するこ

とができ、右認定・判断の過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の

専権に属する証拠の取捨判断および右事実認定を非難するものであつて、採用する

ことができない。

同第三点について。

原判決は、EがDに実印および権利証を交付しまたは宮城屋の経営を委任してい

た事実はなく、そのほか、EにおいてDになんらかの代理権を与えまたは代理権を

与えた旨を第三者に対して表示したような事実は認められない旨を判示しているの

であつて、この点の事実認定は挙示の証拠に照らして肯認することができ、したが

つて、表見代理の主張を排斥した原判決の判断に所論の違法はない。論旨は、右事

実認定を非難し、また、原判決を正解しないでその違法を主張するものであつて、

採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 下 村 三 郎

裁判官 田 中 二 郎

裁判官 松 本 正 雄

裁判官 飯 村 義 美

裁判官 関 根 小 郷

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